“立場を超えて人が集い、対話や交流を通して新しい可能性が生まれる”そんな場を地元北海道でつくりたいという想いで大学院を休学し、様々な分野で場づくりを行っているhome’s viの門を叩いたのが2016年3月。インターンの活動終了を1ヶ月後に控えた2016年9月末にこれまでお世話になったhome’s viのメンバー向けに活動報告会を開かせていただきました。当初参加者は5,6人を想定していましたが、蓋を開けてみると集まったのは12人! この半年で慣れ親しんだはずの町家の事務所がこの時ばかりは別の空間のように感じられ、ほどよい緊張感の中パワーポイントを使って報告しました。
自分は大学1年まで人とコミュニケーションをするのが苦手で日々淡々と学校に通っていました。しかし、大学1年の春休みに「自分から動かないと何も成長できない!」という危機感を抱き、たまたま大学で目にした議員インターンシップというプログラムに参加しました。そしてその活動の一環として地元小樽のボランティアに参加し、様々なバッググラウンドをもつ人達がそれぞれの想いをもって活動している姿に触れ、「人と関わる、地域と関わるって面白い!」と思うようになりました。それをきっかけに様々な地域の活動に参加するようになり、「一人では不可能なこともみんなで力を合わせれば可能になる」という“つながる力”を強く感じた一方で「同じような想いをもちながらも活動がバラバラでつながっていない」という現状も目にしました。地域の色々な人達と関わる中で、自分も何かの形で地元に貢献したいという想いが強くなっていた自分は、そんな現状に対して「そのつなぎ目をつくる役割こそ今このまちに求められていることだ!」と確信しました。そこで“地域のつながり”“協働”をキーワードに他地域の取り組みを調べる中で、「立場を超えて集まった市民がゼロベースでまちについて話し合い、チームをつくって活動する」という面白い取り組みが京都にあることを知り、かつてその取り組みの事務局をおこなっていたhome’s viと出会うことになりました。home's viのホームページを見てみると、実績があるだけでなく、場づくりをする上で大切にしている価値観が強く感じられ、「ここで学べば場づくりの表面だけでなく深いところまで知ることができる!」そう感じてhome's viでインターンシップすることを決めました。
一口にインターンと言っても様々な関わり方ができますが、自分は大学院を休学していたため、関わることのできる活動にはできる限りたくさん関わる、というスタンスでインターンに臨みました。そのため、場づくりの現場だけではなく様々な事業の打ち合わせやhome's vi内部の会議、勉強会など活動領域問わず関わらせてもらいました。以下では、その中からいくつかピックアップして紹介したいと思います。
①面接(あなたがしたいことと、home's viがしてほしいことのすり合わせ)
②インターン/プロボノとして活動に参加する日程の調整。
③活動開始 *まず色々な活動を体験してから、活動を開始することもできます
ふしざくは、伏見に関わる人達がまちについてざっくばらんに語り合い、チームを作って自分たちができることを実践するという伏見区の事業で、毎月一回定例会が開かれます。この定例会だけではなく、区役所の方やまちづくりアドバイザー、各分野別センターの方が参加する事務局会議にも出席させていただき、現場とその舞台裏の両方からこの取り組みを見ることができました。地域で世代も職業もバラバラの人達が集まり対話する場のリアルな姿を見て、年齢など参加者の特性に応じた場の進め方が大事であることを体感したり、まちづくりにおける対話や交流の役割を学んだり、と身をもって様々な学びを感じました。
これはhome’s viがファシリテーションをした事業で、学生や社会人、研究者が一緒になってコミュニケーションロボットの新しい活用法を探るという場でした。10時から18時という長時間、対話の手法を所々に取り入れ発想を膨らませながらチームでアイディアを出したのですが、参加者が「楽しかった!」「もっとやりたかった!」と言っていたのが印象的で、「楽しめる対話」や「初対面の人にも安心感を与えられるファシリテーターのあり方」について考えさせられる一日となりました。
home’s viの代表が京都文教大学で毎年担当している授業の協力者として、夏休み前3日間の集中講義の授業設計と場の進行の一部を微力ながら手伝わせていただきました。授業といっても通常の講義室の座席配置でするのではなく、椅子を円にしたり机を合わせたりして対話をメインに行う異色の(?)授業でした。 集中講義のため授業時間は朝から夕方までで、その上当日の場の雰囲気を見てその夜に翌日のプログラムを練り直す、という進め方だったため、非常に濃密な時間を過ごすことができました。授業の内容は、受講生同士の関係性を築きながらそれぞれの夢や未来に向き合うというものだったのですが、3日間を通して目に見える形で学生が変化し「場の力」「対話の力」を強く感じた印象的な場となりました。また、一度設定したプログラムを前日の場の雰囲気によって変えるというプロセスを体感し、臨機応変に(かつ入念に)場をつくることの大切さを実感しました。
インターン期間中は現場に出るだけでなく、home’s vi内部でおこなう様々な会議・打ち合わせにも参加させてもらいました。タスク管理の会議や経理関係の会議、広報に関する会議、日常の業務とは別に長期的な視野でおこなうミーティングなど、場づくり以外にも組織運営について様々な側面から学ぶ機会があり、それまではそれほど意識していなかった「組織のあり方」を考えるきっかけにもなりました。
この他にもhome’s viの自主事業である「場づくりサミット」や「場づくりカレッジ」、伏見区醍醐支所の事業であるまちづくり講座「おとなだいご塾」、月一回組織を超えて人が集い対話する場「ぞうの湯」、山科区清水焼団地の陶器市で開催するマルシェ事業、home’s vi内部の各種勉強会、様々な打ち合わせなどに参加し、ここでは書ききれないほどのたくさんの学びを得ることができました。
home’s viのインターンをして一番良かったと思うことは、ステキな人たちとたくさん出会えて色んな考えや視点に触れることができ、その中で改めて自分のあり方と見つめ合えたことでした。home’s viは行政、地域、企業、NPOなどと様々な関わりを持つため、ファシリテーション分野の方だけではなく、home’s viと一緒に事業をおこなう役所の方やまちづくりアドバイザー、一般企業の方、まちづくり活動を実践する地域の方など多種多様な人と出会い、話す機会があります。また、home’s viのスタッフや関係者も個性的な人たちが多く、長く付き合えば付き合うほどそれぞれの価値観や物事に対する考え方、関心分野などを知ることができ、その多様性を肌で感じることができます。
インターン期間中はこうした出会いを通じて視野が広がり、その上で「自分はどんなことを大切にしてどんな生き方・働き方をしたいのか」という問いに向き合いました。場づくりやファシリテーションに関する哲学や知識、ノウハウを学べたことももちろん良かったですが、それ以上に多様な人との出会いの中で刺激を受け、「自分らしさ」「自分のありたい姿」とじっくり向き合えたのは自分にとってすごく大きな意味のあることだったと思います。これはおそらく、home’s viが一人ひとりの個性や想いを尊重する場づくりをしていることに加え、home’s viやその周り(home’s vi的に言うと生態系)が多様性に溢れ、夢や理想を自分の原動力にしている人が多い環境だったからだと感じています。
「イマイチなところ」と聞いてピンとくることはあまりありませんが、人によってはイマイチと感じるかも、ということは、インターンが制度としてしっかりと確立されていないことです。もう少し具体的に言うと、インターンをすることが決まっても明確なプログラムが与えられるわけではなく、その都度「これやってみない?」「参加しない?」と声がかかるので、多少“いきあたりばったり感”を感じてしまうかもしれません。ただ、だからこそ思ってもいなかった学びや気づきを得られたりするので、その時は億劫に感じても声がかかったらどんどん関わってみるのがおすすめです。しかし、インターンを通じて明確に達成したい目標があるなら自分から動くことも必要です。インターンのプログラムがパッケージとしてあるわけではないので、home’s viに散らばっている学びの要素を集めるのは自らがしなければなりません。例えば、ファシリテーションを学びたいと思ってもそれをレクチャーしてくれる場はありません。それは現場で体感したり、直接聞いてみたり、勉強会の場を設けたり、自分で動かなければ得ることができないので積極性が必要です。「インターンの受け入れ体制が不十分」と言えばそれまでですが、逆に考えると“自分から学びをつかみにいく姿勢”が育つ良い環境とも言えます。
改めてインターン生活を振り返って思うのは、home’s viのコミュニティは多くの学生や社会人にとってみればかなり特殊でありながらも非常に人間的で、だからこそ刺激的で学べることがたくさんあるということです。自分自身、当初の目的である“場づくりの勉強”を超えてもっと大きなものを学んだと感じています。それが何であるかはhome’s viに来て直接感じて欲しいと思いますが、そのためには当初のインターンの目的に縛られずhome’s viのコミュニティにどっぷり浸かってみる、ということが必要だと思います。場づくりやファシリテーションの知識やノウハウを学ぶなら他でもできることかもしれませんが、home’s viの本質に触れられるのはここでしかできません。そしてそれは必ず自分のやりたいことにも活きてくるはずなので、“常に学びの姿勢でいる”ということを忘れずどんどんhome’s viに関わっていくと面白い発見や学びがたくさん見つかるはずです。もしhome’s viでインターンするならば、表面的な知識やノウハウだけでなくhome’s viがもつ価値観や世界観まで感じ取らないともったいないと思うので、ぜひどっぷりとhome’s viに浸かってほしいと思います!